その有効性を術者と患者が共有可能な映像効果を生む Hybrid Digital Microscope。

中島京樹 茨城県開業 大洗中島歯科医院

開業:1993年
専門分野:口腔外科
マイクロスコープを導入しようとした経緯:
本来のマイクロスコープとしての使用以上に、画像の記録あるいはプレゼンテーションへの使用を主眼に考慮。2004年にMANI社製マイクロスコープを導入、独自にコンピュータと接続。2008年9月、より目的に近いPCとのHybrid機種Explorer(カムサイト社製)を導入。
現在の主なマイクロスコープ利用分野は?:
歯内療法、外科処置、補綴処置(特に形成時)、審美治療、小児歯科(治療トレーニングなど)、プレゼンテーション(インフォームドコンセントの補助説明用)
購入資金:全額借り入れ

エクスプローラーセミナー開催

感染根管治療の効果と困難さを共有し、根尖病巣を消失し得た1症例(マイクロスコープ+α効果)。

 診断は、X-RAY像から明らかなように、左側上顎第二大臼歯慢性化膿性根尖性歯周炎である。根尖には歯根のう胞があり、Eitelの貯留により上顎洞方向に拡大、同時に第三大臼歯がのう胞により押し上げられた状態になっている。マイクロスコープによる画像から、拡大により根管口の確認を容易にし、作業精度を上げることにある。液晶モニターで拡大像を確認、作業はマイクロルーペと併用し2方向から患歯を視認し、根管口へのアプローチを行う。治療方針は、リスクを説明した上である程度病巣の縮小を図り、抜歯とのう胞摘出もしくは時間を掛けて保存処置を行うことを画像とともに説明した。


1、この角度では、近心根がかくれているが、他の根は根管口の位置が分かる(矢印)。
根管口が小さく、周囲と色調の差が少ないケースでは見失いがちであるが、拡大することで確認が可能である。


2、発症時のエックス線写真。


3、 根管内へのレーザーの応用。薬品だけではなしえない効果を期待して、使用。


4、 症例は異なるが、特徴として従来のマイクロルーペの使用と同時にマイクロスコープ画像を視認しながらの作業が可能となる。対物レンズと被写体までの距離が長く作業性に優れる。

術者が得られるマイクロスコープの有効性を患者も共有可能な映像と治療効果。

症例の概要

 数年前より当歯科医医院で管理中であったが、2008年PMTCの経過観察中に右側上顎第2大臼歯に疼痛が出現。写真1のように以前には問題のない状態であるが、根尖相当部位に近接して第3大臼歯が埋伏している。写真2は、発症時のX-RAYである。右側上顎第2大臼歯根尖相当部に透過像を認め、第3大臼歯は上顎洞後壁の上方に移動している。前述したように、治療方針として消炎後抜歯と保存する方法をインフォームドコンセント時に説明した。しかし、抜歯では同部欠損へのインプラント治療か、保険では義歯以外に方法がないことから保存する治療を希望され、ブリッジを撤去後、感染根管治療を開始する。この際、根管の視認など根管処置にはマイクロスコープが活躍することになった。治療当初は、根管を解放により排膿と減圧を図る。排膿が減少した段階で、レーザーを根管治療の補助に使用する。写真3は、治療開始後6ヶ月、仮根充後1ヶ月目のX-RAYである。第三大臼歯が元の位置に戻りつつある。

写真1 発症以前のX-RAY。 写真2 発症時のX-RAY。根尖相当部の透過像、第3大臼歯の位置の変化が見られる。 写真3 仮根充後1ヶ月目のX-RAY。第3大臼歯の位置が戻りつつある。自覚症状はなく、テンポラリーレジンブリッジが装着されている。

術前のエクスプローラーによる画像拡大効果

一般的な視野を想定して見た状態、十分に根管を見分けるにはやや不十分である。


画像拡大により根管の位置が詳細にわかる。また、カメラの位置が自由にできる本機種では、通常では得られない2方向から視認する効果がある。(写真小参照)

テクニックの勘所と工夫
 治療開始に当たり、十分なインフォームドコンセントは必要不可欠である。本症例では、根尖部病巣の改善を期待し、ダイオードレーザー(Ezlase・BIOLASE社製)を使用した。根管内へのアプローチの容易さは、ファイバーが200μmという細さとフレキシブルな点が根尖付近まで十分に到達させる意味で非常に有効であった。基本的に根尖よりファイバーは出さないのが原則だが、今回はのう胞腔が縮小された時点で、根管長に+0.5mmファイバーを根尖より出るよう設定し、のう胞腔内がより出血する程度にレーザーを2〜5秒程度照射(出力2.0W/100μsec ON,100μsec OFF)し、のう胞の消失を期待する。排膿が収まるまでの十分な根管解放と、浸出液が多い時点では頻回の根管内貼薬が不可欠である。また、貼薬にはフェノール系薬剤は使用せず、抗生物質を懸濁した生理食塩水を使用し、レーザーによる治癒促進作用を期待した。浸出液が消失した時点で、カルシウム製剤(カルシペクス)による仮根充を行い経過観察した。このマイクロスコープは、顔貌から1歯をとらえる拡大率まで可能であり、治療記録としての使用も多い。


レーザー治療時、根管長をファイバーにマークし、操作を確実に行う。


根管拡大作業時。


根管口が不明瞭な症例。通常の視野を想定した画像。


上写真の拡大像。拡大により、確実な処置を可能にする。


拡大作業時。

術後経過
 現在仮根充の状態で経過観察中である。仮根充後3ヶ月を経て、再発の兆候はない。第3大臼歯もほぼ発症前の位置まで改善してきていることが確認された(写真 13)。第2小臼歯も処置を行い、メタルコアまで終了した。今後は、第3大臼歯が改善したことから、補綴処置に移る予定である。
写真 13 仮根充後3ヶ月、最近のDental X-RAYである。第3大臼歯の歯冠がほぼ元の位置に戻り、根尖病巣は消失している
写真 14 仮根充後、レジンで仮封。第2小臼歯は、メタルコアまで処置が終了している。

Explorer選択の理由

 開業当初より、PCとの連携による画像処理を模索していた。当然、PCとのHybridマイクロスコープはその目的にまさに願ったりの機能を持つ機種である。動画撮影が可能であり、静止画を後から編集できる優れた機能もあり、インフォームドコンセントを含めたプレゼンテーションには欠かせない。マイクロスコープ+αの多種多様な応用が可能である。 また、眼や身体の疲労が少ない。

Explorer導入後の使い勝手

 ただのマイクロスコープではない。治療を動画で記録し、必要な部分を静止画に残す。治療直後に再生、説明。通常のライトの位置(45~55cm)から撮影可能で、マイクロルーペによる作業の妨げにならない。モニターによる視認は十分な立体感が得られない点もあるが、マイクロルーペとの併用で十分カバーできる。PCとの連携で、プレゼンテーションも可能だ。また、使用感からは、従来の「覗く」から「見る」ことへの変化により、眼や姿勢への負担が軽減された。

これから購入する読者へアドバイス

 液晶モニターを使用するこの機種は根管治療など距離感を必要とする三次元的な視覚効果を期待する場合を除けば、PCとのハイブリッド化によるデジタルマイクロスコープとして、画像記録(動画、静止画)プレゼンテーションなど、+αの効果と術野の拡大視野を手に入れることが最大の目的である。特徴として、鏡筒を覗くより遥かに姿勢変化が少なく、眼の疲労感が少なくなることがあげられる。マイクロスコープをどう使うか目的をしっかり定める必要がある。最新情報では、機種のバリエーションとして天井吊りタイプも登場したようだ。

マイクロスコープを導入するまでの臨床の道のり
1985年 東北歯科大学(現奥羽大学)卒業。
1990年 鶴見大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)同第2口腔外科助手勤務。

1993年 茨城県大洗町開業 開業時よりコンピュータ画像によるプレゼンテーションを模索。

1995年 鶴見大学歯学部非常勤講師。コンピュータによる画像記録、インフォームドコンセントを目的とするDENTA(インフォメーションポケット社)開発に協力、導入。
2002年 レーザー治療を導入。 PCの高性能化に伴いより高度な画像処理の可能性を模索。
2004年 MANI社製マイクロスコープ導入。マイクロスコープの画像をダイレクトにPCに記録、画像処理。

2005年ALD Standard Proficiency取得。

2007年ALD マスター取得(Advanced Proficiency)、日本レーザー歯学会認定医取得。 PC用モニターなど初期のシステムをリニューアル。

2008年カムサイト社製Explorerを導入。PCとのHybridマイクロスコープであり、開業当初より模索したシステムに最も近い。

スタッフから一言
保月 紘子 さん(歯科衛生士)
マイクロスコープで作業をするドクターの視野が共有できるのは、アシストがしやすく作業の状況がわかるのがいい。

今回使用した機材
Ezlase(BIOLASE社)−Diode Laser
波長 940nm  特徴 小型・軽量(1kg)、多彩なディスポーザブルチップ、多種多様な設定が可能。
問い合わせ先 (有)ウエイブレングス laser@wavelengths.jp

 

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